OFF T!ME|目をOFFにすると、発見がある。

日本ブラインドサッカー協会が運営する、ブラインドサッカー体験プログラム「OFF T!ME」のブログです。ブラインドサッカーで培ってきたものが、コミュニケーション、チームビルディング、ダイバーシティ理解に効果をあげています。

OFF対談(中)〜プログラムの裏話

前回の【OFF TIME対談(上) OFF TIMEって、どんな感覚?】に引き続き、体験プログラムを開発した日本ブラインドサッカー協会の松崎英吾事務局長と、「OFF TIME」の名付け親である澤田智洋さん(コピーライター/CMプランナー)の対談です。お楽しみください。

 

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【OFF TIME対談(中) プログラムの裏話】

-小中学生向けの体験授業「スポ育」では多くの経験を積んでいて、そのプログラムを大人用にバージョンアップする時にどんなことを心掛けたのでしょうか?

 

松崎:OFFにすることだけに価値があるということではないんです。目をOFFにしたチームワーク体験から、普段大人が忘れがちな感覚や、気づいているんだけどなかなか踏み込んでいけない感じを再現できたらいいなぁと思っています。社会に活かせるかどうかはまだまだ課題がありますけど、たとえばハイタッチや握手から生まれる信頼は皆さんに体験していただきたいですね。その体験や感覚の振り返りの場として懇親会を用意しています。感じ方や刺さるポイントはそれぞれの人によって違います。これが体験型のよさかなと。

 

-プログラムをつくる時にどのあたりが一番難しかったですか?

 

松崎:プログラムを考えるのが好きなスタッフはたくさんいるので、みんなでブラッシュアップしたんです。参加者の皆さんは、来る前はパソコンに向かって仕事をしているわけなので、ギスギスしている人たちもいます。その中で、初めて会う人たちに短い時間で関係性を築いてもらうところが難しいんです。子どものようにうまくいかないだろうと思っていましたけど、やってみたら、子どもよりも仲良くなるのが早かったんです。

 

澤田:最初のころから、うまくいったんですか?

 

松崎:それがブラインドサッカーの持っている強さでしょうね。気づきの仕組みが含まれている。種が含まれている、と言いますか。最初の頃は、今のプログラムより、もっとボールを蹴らせていました。そうすると、難しいという感想が多くなってしまいました。それは、僕らが伝えたかったことではないですし、気づいてほしいことでもありません。ブラサカはすごいな、という感想で終わってしまうのはこのプログラムの主旨とは違うんです。

 

-特にサッカー経験者の参加者から、プログラムがサッカーっぽくない、という声も聞いたりすることもありますけど?

 

松崎:将来的には、サッカー選手対象のプログラムとか、バージョンを分けることも考えています。できるだけ、一人ひとりに楽しんでもらえるものにしたいです。でも、競技団体である日本ブラインドサッカー協会がやっているからこそ、できることがあるんです。勝利を目指して、必死にコミュニケーションを考えているから、あのワークになっています。そして、僕ら、日本ブラインドサッカー協会のビジョンは、勝つだけでは達成されません。ブラインドサッカーを体験したら障がい者を見る目が変わった、という導線をしっかりとつくっていきたいです。

 

●プログラムは生き物みたいなもの

澤田:僕はプログラムの最初の準備運動からすごいと思いましたよ。しかも、2回目に参加した時、難しくなっていました。プログラムが進化していました。

 

松崎:そのあたりは、毎回毎回、受講者の雰囲気を見て、いろいろと変えてやっています。それから、ファシリテーターは受講者を見て、気づかれないように種を植え付けているというか、そういうことを意識しながらファシリテートしています。ファシリテーターもワークごとに違う人がやっています。それは、僕らの練習にもなっていて、例えば、苦手なワークを担当すると、それを周りが見ていて、ここに何を入れるべきというのをお互いに言い合うんです。ワークはファシリテーターの実力も問われます。ファシリテーターたちも力を養わなければならないんです。

 

澤田:プログラムは安定した型はあるけれど、毎回違って、生き物みたいのものなんですね。

 

松崎:OFF TIMEは遅刻厳禁と周知しているんですけど、ある回に、遅れてきた女性の方がいて、それをすごく引け目に感じて、自分の良さを出していなかったことがありました。その方があるワークの前に、チームで円陣を組んだ時に「あんた達、絶対やるわよ!」と叫んだんです。どこのキャプテンですか、という感じになって、この人がスイッチ入ったら、他の人も「俺らもやらなきゃ」という雰囲気になりました。遠慮していたのが、ちょっとした事で変わったんです。

 

澤田:参加者は自分の人間臭さが感じられる、周りの人の人間臭さも感じられます。それがすごく心地いいですよね。

 

松崎:OFF TIMEは、自分らしく振る舞うとうまくいくというのがあるんですけど、澤田さん、どう思いますか? 空気を読みすぎると自分らしさが出ないんじゃないですか?

 

●自分を出す。違いを敢えて使う

澤田:自分らしさを出さないとやっていけないです。孤立します。なるベく自分の良さを出して、相手に認めてもらわないと関係性が成り立たないですよね。松崎さん、自分を出さないで終わってしまう人もいますか?

 

松崎:その時は、ファシリテーターが介入します。周りを気にしすぎると、チームに影響してしまうんです。物理的な距離の近さから関係性が生まれると思っていて、場合によっては、いきなりファシリテーターが来てハイタッチする事もあります。それは、参加者同士の距離を縮めようとしているんです。

 

澤田:そのスイッチの入れ方はどこにあるんですか?

 

松崎:遠慮している人に敢えて注目させますね。先日の企業研修で、日本語を話せない外国人がいたことがありました。それなのに、誰も英語で呼びかけないし、誰も話さないので、孤立してしまっていました。そんな時に、ファシリテーターは見て見ぬ振りをしてはいけないんです。「この人孤立してますよね。皆さんは同じ職場で仕事をしていて、英語しか話せないのを知っていて、日本語でしか話をしていませんよね。誰も彼に呼びかけませんよね。誰がリーダーシップを発揮してまとめるんですか?」と、はっきりと強く言いました。別の企業研修では難聴の方がいたんですけど、見た目では分からないので、孤立している理由がわからなかったんです。その人が「普段は声が大きいと思われているかもしれないんですけど、難聴なんです。うまくできないので足を引っ張るようだったら抜けます」と僕に言ってきました。でも、それはこのチームにとって大きいことじゃないですか。難聴であることをみんなの前で言っていいと言われたので、「皆さんは同じ部署で働いていてこの人が難聴である事を知って、どうコラボレーションしていくんですか? それをここでやりましょう」と言いました。そうすると、コミュニケーションに変化が生まれました。見える障がいや見えない障がい、違いを敢えて使うんです。


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次回は、最後の【OFF対談(下)〜今後のさらなる可能性】へと続きます。

お楽しみに!

 

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