こんにちは!!
ブラインドサッカー選手のハジこと、寺西一です。
暑さも日に日に増してきているこの時期は、ブラインドサッカーの練習も体調管理をしっかりやらなければなりません。みなさんも、昼夜問わず暑さにやられかねないこの時期は、しっかりと熱中症対策をしましょう!
さて、第3回目のOFFインタビューは、私の大学時代の恩師であるロバート・リケット教授にお話を伺いました。物腰の柔らかいリケット教授は、来日してからかなりの年月が経つとあって日本語も達者。オフタイムについての深い考察をお聞きすることができました。
ハジ:リケットさんには昨年体験いただいたのですが、参加する前のオフタイムのイメージってどんな感じでしたか?
リケット:ブラインドサッカーの練習をするのかと思っていました。実際のブラインドの選手が何人かいて、練習をしている中に僕らも混ざるのだろうと思いました。
ハジ:そのイメージからすると、実際のプログラムはちょっと想像と違ったものになりましたよね。
リケット:そうですね。でも、非日常的な感覚を味わうのには十分な時間でしたね。
ハジ:どんなところが非日常的でしたか?
リケット:初めて会った人と、ここまでいきなり話すことは日常まずないですね。初めての人には気も使いますし、遠慮もするので自然に距離ができてしまう。でもオフタイムでは、まず二人組になってストレッチをするので、どうしても話さなくてはいけなくなるんですよね。なので、そこで最初の境界線は越えられますね。
ハジ:そこで境界線を越えられるかどうかって、大きなことですよね。
リケット:自分の場合、外国人ということで周りからどうしても気を使われることが多いので、自然と境界線ができてしまう。でも、意図的に声をかけなければならない状況をアイマスクをしてつくることで、そこは突破できたんじゃないかって気がします。
ハジ:その他のワークで何か気づいたことってありましたか?
リケット:そもそもアイマスクを着けて何かをするということが、価値観を大きく変えてくれましたね。
ハジ:どのように変わっていったのでしょう?
リケット:私達は普段、目が見えることを前提に暮らしています。見えていることを特に意識せず、当たり前に思っています。けれども、見えなくなると戸惑って何もできなくなる。普段見えない世界を意識するというのは難しいことですが、当たり前のことを当たり前と思わないこと、というのは、誰にでも必要なことだと私は思います。そういった中で、オフタイムのような体験は当たり前のことが覆されるという意味で誰にとっても貴重な体験だと思います。
ハジ:普段は見えているので“見えない自分”について考えることもなければ、特別意識することもないですよね。
リケット:でも、意識しないからいい、ということではなくて、実際に“見えない世界”というのはあるので、それを知らないでいるというのは、やはり偏ったものの捕らえ方なんですよね。こう言っては失礼にあたるかもしれませんが、自分自身が見えなくなるということも十分に考えられることなわけですから、そんな時に自分がどうあるべきかということも、こうした体験をしながら考えることも大切かもしれないですね。
ハジ:自分の中で見えない自分とはどんなものかを見ていくというのは、とても深く難しいけれども、大切な時間ですよね。それと同時にオフタイムでは「チームで活動することからの発見」というのも大切にしているのですが、チームという観点から、リケットさんはどのようなことを考えられましたか?
リケット:やはり、しっかりとした関係を作るためにたくさん話し合いをしました。最初にも話したように、初めて会った人と、ここまで深く関わることはありません。それは、初めて会った人にいきなりたくさん話をするのはおかしいという考えが自分達の意識の基本的なところにあるからです。でもオフタイムの中では最初にストレッチをし、アイマスクをして動いていく中でコミュニケーションもとれて関係ができてくるんです。チームで行うワークの最後には最初のころにあった遠慮はすでになくなってるんです。
ハジ:質が高くて濃い話し合いができないと、どのワークも成立しないようになっているので、良い話し合いのできるメンバーが集まっていたんだと思います。あと、ちょっと角度を変えてお聞かせいただきたいのですが、リケットさんの立場から見て、どのような人にこのオフタイムは役に立つと思われますか?
リケット:やはり大学の教員をしているので自分のゼミの学生の関係性をよくするために体験させてみたらいいんじゃないかと思います。それ以外にも自分のアイデンティティに迷っている人にも自分の中の見えない自分と対話しながら他者と活発にコミュニケーションをとる中で自分を発見してほしいですね。
ハジ:自分との対話という側面と他者との関わりという側面の両方があるということですね。
リケット:あともう一つ。私は体験した当時68歳で、初めての人と会ってあれだけコミュニケーションをとりながら体を動かすということはありませんでした。また、見えない世界に自分を置くということで非日常的な経験ができ、大きく価値観が変わりました。考えが固まっていると思われがちな私達の年代の人間にもこのような体験は必要だと思います。
ハジ:リケットさんにとっても目からうろこな体験だったのですね。たくさんのお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
オフタイムは体験する人の見方、感じ方によっていろいろな気づきがあるということを改めて認識することができました。
インタビューにご協力いただきましたリケットさん、ありがとうございました。
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